最高裁判所第三小法廷 昭和24年(れ)1495号 判決
主文
本件上告を棄却する。
理由
弁護人若林清の上告趣旨は末尾添付別紙記載の通りでありこれに対する当裁判所の判断はつぎの如くである。
第三点について
原審が証拠としている松隈勝彦に対する司法警察官の聽取書については、原審においてその供述者を証人として尋問せられたい旨の請求はなかったところ、原審が職権で、受命裁判官に尋問させているのであって、被告人は、立会の機会を與えられ、弁護人岩成自助はこれに立ち会って居るのである、この受命裁判官の証人尋問調書と司法警察官の聽取書との何れを採用するかは、原審の専権に属するところである(昭和二三年(れ)第二九四号同年七月二九日大法廷判決参照)。又原審が証拠としている田口満に対する司法警察官の聽取書は、同人がその聽取書作成後四日の後に死亡しており、このことは、刑訴應急措置法第一二條第一項但書の尋問の機会を與えることかできない場合に該当し、これを証拠とすることは、何ら違法ではない。從って論旨は理由がない。(その他の判決理由は省略する。)
よって上告を理由なしとし旧刑事訴訟法第四四六條に從って主文の如く判決する。
以上は当小法廷裁判官全員一致の意見である。
(裁判長裁判官 長谷川太一郎 裁判官 井上 登 裁判官 島 保 裁判官 河村又介 裁判官 穂積重遠)